目的と手段の関係 2——ブランドの裏側を知ること、主体的にものを選ぶこと

目的と手段の関係 2——ブランドの裏側を知ること、主体的にものを選ぶこと

UNLEASH焚火会@長野県伊那市

UNLEASHでは2023年10月11〜12日に焚火会を開催した。この焚火会はUNLEASHにさまざまな側面からご協力いただいているブランドさん同士の親睦を深めるために企画したものだ。ご参加いただいた木村石鹸工業株式会社の木村祥一郎氏と株式会社トーキョーバイクの塚崎淳司氏、また、ホスト役を担当していただいた株式会社やまとわの奥田悠史氏に、この場を借りてお礼を申し上げたい。

開催場所はやまとわのある、長野県伊那市だ。伊那市はやまとわさんが位置するにふさわしい、まさに自然あふれる場所だ。伊那谷、その周囲を囲むアルプス山脈の高さは、まるでそこが世界の縁かのような錯覚を覚えるほどだ。その峰々にかかる雲、そしてその雲の間からこぼれる陽の光を眺めていると、自然に対する畏怖を感じざるを得ない。そんなアニミズムを身体的に納得させてくれるような魅力的な場所で1泊2日を過ごした。

焚火と伐倒で、伊那市を遊ぶ

1日目のメインイベントは、やまとわのオフィス裏を借りての焚火だ。揺らめく火のもたらす暖かさは谷の寒さを忘れさせてくれる。火の中で木がはじける音も心地よく、煙は香ばしい匂いと目に染みる痛さの両方をもたらす。デスクワークの日々で忘れていた感覚が呼び戻されていく。焚火はまさに五感を刺激するアクティビティだ。

焚火は自由だ。UNLEASH Equipmentの発起人であり山岳信仰の行者でもある山本は焚火のそばで法螺貝を吹いていた。また、焚火でさつまいもや銀杏を焼いている人もいた。現代ではコンロや電子レンジのおかげで時間を基準に焼き加減を判断できるが、火での調理は絶えず見守る必要がある。しかも、絶えず見守っているにもかかわらず、そううまくはいかない。前触れもなく銀杏が銃声のような音とともに爆ぜる。法螺貝の音と銀杏の音が周囲に響く。その音を聞いて、誰かが「『銃声と法螺貝』って小説のタイトルみたいですね」と言う。そんなたわいのない時間が過ぎていく。

日が暮れるにつれて明かりは焚火だけになっていく。「寒くなるから引き上げよう」と焚火を終えるために火を消すと、辺りは途端に闇夜となった。その後、伊那市内の居酒屋で信州そばなどのご当地料理を堪能してから、宿へと向かった。宿に到着してふと空を見上げると、そこには満天の星が見えていた。

【写真】アカマツの木を伐倒する様子。大きな木が職人の手によって、大きな音とともに倒れる。

2日目の朝は、アカマツの伐倒見学から始まった。伐倒では、チェーンソーで「受口」という切り込みを入れて倒れる方向を決めた後、受口の反対側に用意した「追口」という切り込みから楔を打ち付け、少しずつ木を傾けていく。楔が埋まるほど打ち込んでもなかなか倒れないアカマツに、自然の生命力を見た気がした。木が倒れていく様子は圧巻で、幹が地面に倒れる瞬間に体に響くほどの衝撃を感じた。狙い通りの方向にうまく倒れさせる林業の技術にも魅せられた。

その後、やまとわのオフィスと工場を見学させてもらい、伐倒した木が家具や経木に加工されていくプロセスを学んだ。やまとわは「森をつくるくらしをつくる」というコンセプトを掲げている。言うは易く行うは難し、いくら大きなコンセプトを掲げていても実践できている会社は多くない。だが、やまとわはまさに「森をつくるくらしをつくる」を実践している。

ブランドの裏側を、もっと知りたい

単なる消費者として暮らしていると、商品の機能や値段ばかりに目がいく。コストパフォーマンスを重視した消費活動はシビアなもので、少しでも高いと購入をためらってしまう。「他よりも安いから」と、まるで消去法のように商品を選ぶこともある。

一方で、今回のようにものづくりの現場を目にすると、商品が店頭に並ぶまでの裏側に思いをはせるようになる。材料の確保や加工にどれだけの手間がかかるのかや、誰がどんな思いで商品を開発しているのかを知ると、どうしても愛着が芽生えて応援したくなる。そして、その想像力によって商品を購入するようになる。この時、消去法でもなく、ネット上のレビューに流されて買うわけでもない。まさに自分が主体的に商品を選んでいるという感覚が生まれる。

今回の見学だけでは、やまとわのほんの一部のことしか知れていないのかもしれない。しかし、その一部を知ることが、「もっと知りたい」という願望を生む。「まったく知らない」から「少し知っている」への小さな変化は、商品を選ぶための大きな理由を与えてくれる。この「もっと知りたい」という感覚こそが、商品やブランドを選ぶ楽しさの源なのかもしれない。

今回の焚火会は、UNLEASHをきっかけに思い入れのあるブランドが増えていき、ブランドに携わる人との交流を通してブランドの裏側まで好きになる、そんなUNLEASHの目指す未来を象徴するようなイベントになった。次回はまた別の場所で開催したいと思う。無目的にはじまったなイベントが、ブランドに対する愛着を生み、愛着を持って商品を選ぶことで、暮らしが少し変わる。なんでもなかったはずのものが、特別に変わっていく。UNLEASHはそんなアクシデントの場所でありたい。

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