目的と手段の関係——遊び・焚火・無目的

目的と手段の関係——遊び・焚火・無目的

目的と手段のパラドックス

ピーター・ドラッカーは企業の目的を「顧客の創造」と定義し、そのための手段としてマーケティングとイノベーションを挙げたことで有名である。ビジネスでは目的と手段が明確であることが求められる。パーパス経営という言葉が生まれているように、パーパスやビジョン、ミッション、バリューなどを明確にして、これらの実現に近づく適切な手段としてKPIを設定していくことがビジネスの基本的な進め方である。 

ただ、目的と手段が逆転して見える場合もある。たとえば、パーパスの実現のためには顧客を獲得して資金を集める必要がある一方で、資金を集めるためには顧客にとって魅力的なパーパスを設定する必要があるとも考えられる。この場合、パーパスを実現するために利益を求めているのか? それとも利益を生むためにパーパスを設定しているのだろうか? 「ニワトリが先か、タマゴが先か」の議論のように、どちらが目的でどちらが手段なのかが分からなくなる。

もしかすると、目的と手段が直線的に並べられると考えるのは科学的思考の産物なだけなのかもしれない。現実は複雑な因果関係で構成されることを前提とするシステム思考のような考え方も登場しているが、究極の目標を実現するために下位目標が続いていくという階層構造で目的と手段を捉える以外の視点はあるのだろうか?

遊びの無報酬性

目的と手段の関係が通用しないものがある。それはUNLEASHが掲げているテーマの一つでもある、遊びだ。遊びを学術的な視点から考えた第一人者はヨハン・ホイジンガだろう。彼の思索は『ホモ・ルーデンス』という種火となり、「遊び」の研究という大きな焚火をもたらした。

以後、様々な研究者が遊びの条件を提案しているが、共通する条件の一つに「遊びとは無報酬で行われること」がある。非生産性とも称される条件だ。人間の遊びだけでなく動物の遊びにおいても挙げられるほど、遊びの本質的な条件とされている。多くの場合、人間を含めた動物は生存と生殖に役立つという報酬のために行動する。ビジネスにおいても、利益の増大や顧客の創出という目的に合わない手段は意味がないとされる。しかし、遊びはその定義上、目的が存在しない。遊んだ先に何か報酬が待っているから遊ぶのではなく、遊びたいから遊ぶ。それが遊びが遊びたる所以である。

もちろん、「楽しい」という感覚が報酬であるとも言えるが、それは遊んでいる時点で得られているから、目的と手段は区別されていない。楽しいという記憶を残すために遊ぶと考えてみたとしても、その思い出は生存と生殖に直接的に関わるとは思えない。そもそもなぜ遊びを楽しいと感じるようなったのかという理由も未だ解明されてはいない。進化論的には遊びも生存と生殖という目的に役立つ手段なのかもしれないが、遊んでいる当人たちはその目的を自覚していない。自覚した時点でそれは無報酬ではなくなり、遊びではなくなってしまうのだが。

遊ぶようにビジネスができればいいのにと思う。遊びというと、ふざけているというニュアンスを感じるかもしれないが、遊びは真面目さとも両立する。むしろ、真面目にしないと遊びにはならないとホイジンガは主張する。ならば、遊ぶようにビジネスをすることもできるのかもしれない。遊びが文化を形成したという彼の主張も踏まえれば、ビジネスと文化を融合させる触媒として遊びを捉えることもできるはずだ。

真面目に遊んでみる

ところで、UNLEASHでは10月に長野県伊那市で焚火会を開催する。UNLEASH関係者が初めてオフラインで集まる機会となりそうだ。UNLEASHにご参加いただいている株式会社やまとわの奥田悠史氏にホスト役を務めていただくので、この場を借りてお礼を述べたい。

この焚火会が企画されたきっかけは、UNLEASH内のオンライン懇親会における木村石鹸工業株式会社の木村祥一郎氏による「イノベーション創出のための懇親会は上手くいかないが、親睦を深めた結果としてイノベーションが生まれることはある」という発言である。実際に会うことの大切さや同じ焚火を囲むという遊びの魅力についての話が盛り上がり、「ぜひ実際に体験してみよう」と今回の実現に至った経緯がある。開催日が迫る中、子どもの頃に遠足の日を待ちわびているあの感覚を思い出す。今からUNLEASHという遊びが始まっていく気配を身体が感じているような気がしてくる。

UNLEASHというプロジェクトを継続していくためには、もちろん経済的な持続可能性は必要だ。それでも、遊びを大切にするUNLEASHとしては、目的至上主義に陥らないようにもしていきたい。利益のためにコラボレーションをするのか? それとも、親睦を深めた結果として利益につながるプロジェクトが生まれるのか? 今回の焚火会はその社会実験になりそうだ。UNLEASHは、商品を購入してくれる顧客を創造したいというよりも、ともに遊ぶ仲間を創造していきたいのかもしれない。遊びについて真面目に考え、真面目に遊び続ける大人でありたい。

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